薬剤師として起業 ―アプリ開発―
野中牧
薬剤師歴 17年
薬剤師として
もともと母親から「資格」をとりなさいと小学校のときから言われ続け、医療系を目指しました。薬剤師がどんな職業かも知らないまま、薬学部へ。卒業後、大学の実験助手で痛みの研究を二年間しました。その経験もあり、臨床試験に興味を持ち、治験センターを併設する病院にその後就職し、病院薬剤師としても、治験に携わる薬剤師としても、経験をつみました。病院勤務は充実していましたが、夜間や休日に呼び出されることもあり、独身だからこそ勤務し続けれる環境でした。結婚が決まり、働き続けたかった私は、念のために事務長に、今後について相談しました。「私は今後結婚して、子どもも作りたい、産休育休はとれますか?」と。返ってきた回答は「コメディカルで産休育休をとった事例がない」と一言。
私は子供を産めば、病院にとって迷惑な存在になるのかと解釈し、退職をすることに。
2012年の出来事でした。
結婚し出産後、主人はしばらく専業主婦で子供のお世話をしてほしいといわれましたが、私は家の中にずっといることが窮屈で、ストレスで、薬局で働くことを選択しました。けれども、想像以上に子供の体調不良で急な早退や遅刻、欠勤が続きました。
薬剤師2人しかいいない環境で、私が休めば薬局に薬剤師1人になる。休めない…
自分の両親や病児保育をフル活用しながら勤務し続けました。
それでも同僚に迷惑をかけている申し訳なさと、働き続けたいという想いの葛藤の日々。
私が退職し、独身の薬剤師が就職してくれたほうが同僚たちは喜ぶのではないかと思うようになりました。
「わたし働き続けてもいいのかな。。。?」と自問自答し続けました。
ふと周りをみわたすと、同じくらいの年齢の子供を持つママ薬剤師さんたちは私と同じように悩んでいることに気づきました。
この悩みの根源は何かというと、休めない環境に原因があり、気兼ねなく休める環境ならば、こんなに「休む」ことに対してママ薬剤師たちは悩まなくてよくなるのではないかと思いました。
今までは、「患者さんの為に」と働いていましたが、これからは「働く薬剤師の為に」働こうと決意しました。
薬剤師として起業
そこで私は、「休みたい薬剤師」の代わりに、「働ける薬剤師」がスポットで勤務できるシステムを作ろうと考えました。最初は私一人だけで、営業し、求められる職場にスポットで勤務しました。
営業に行けば、「私の代わりに何ができるの?」と批判されることもありましたが、必要とされる職場では「来てくれるおかげで、運動会にいけました」「参観日にいけました」「学会に参加することができました」と感謝されるようになりました。
私が働く意義を見出せた瞬間でした。
関心をもつ薬剤師さんや、薬局病院が多くなり、アナログでは限界に。もう少しシステマチックにすれば、私の雑務が減ると思い、アプリ開発をすることを決意しました。
起業することも初めてなのに、アプリ開発なんて、そもそもの用語すらわからない状況でしたが、周りに支えられ1年間かけて完成しました。
ビジネスプランもブラッシュアップしていただき、ビジネスコンテストでも表彰されたりと、起業して3年間悩みながら楽しく歩んできました。ようやくアプリが完成し、スタートラインに立てました。
働き方の多様性が求められているのは薬剤師業界も同じこと。
大分県のように慢性的な薬剤師不足の地域を改善させるには、地域にいる薬剤師さんたちがいかに働きやすい環境をつくることができるか、働き続けれる環境をつくれるかが重要だと考えます。
その一歩となれるように、この「ふぁーまっち」というアプリが沢山の薬剤師さんたちの働く環境を改善していくデバイスになるように広めていきたいと思っています。
『I have a dream』
子育てしやすい環境にすること
これから父親・母親になる人たちの為に。
さらには自分の子供たちが社会にでたときに働きやすい環境になっていることを夢見て、私は働こうと思います
勤務先 : 株式会社 薬けん